8020運動とは「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。
平成元年(1989年)に当時の厚生省と日本歯科医師会が提唱してスタートしました。
今回は、8020運動が必要な理由や達成率などについて解説します。
8020運動が必要な理由
乳歯から生え変わった永久歯は、親知らずを除いて28本です。
その28本のうち、少なくとも20本以上自分の歯があれば食べ物を噛むことができ、おいしく食事ができます。
高齢になっても自分の歯でしっかり食事ができることで、ただ長生きするだけでなく、健康であることが重要です。
厚生労働省の調査によると、令和3年(2021年)日本人の平均寿命は、男性81.47歳・女性87.57歳となっています。
しかし、実際には日常生活に問題なく健康に生活できるといわれている「健康寿命」は男性72.68年・女性75.38年となり、平均寿命とは10年ほどの差があるのです。
8020運動の達成率
8020運動がスタートした1989年は、80歳で20本以上の歯を保っている人の割合はたったの9%でした。
その後、8020運動が徐々に広まり、平成23年では40%を達成。
さらに8020運動スタートから27年後の2016年には、50%を達成しました。
2022年には60%達成を目標にしています。
歯がなくなることで起こるリスク
歯がなくなることで食事や会話がしにくくなり、生活の質が低下します。
見た目の変化
歯がなくなることで顔の筋肉が衰え、しわやたるみの原因になります。
また、抜けた歯をそのままにしておくことで隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が延びてきてバランスが崩れて輪郭の歪みなどの変化も起こります。
会話がしにくい
歯がないことでうまく発音できずに会話がしにくくなります。
特に前歯がない場合、舌を歯や歯肉にくっつけながら発音する、サ行・タ行・ナ行・ラ行は発音が難しくなります。
胃腸の負担
よく噛むことで唾液が分泌されます。
唾液に含まれる消化酵素であるアミラーゼ、マルターゼ、リパーゼは胃腸での消化を助ける役割があります。
また、唾液には消化の役割以外にも自浄作用や抗菌作用、口腔内の酸を中和する緩衝作用、歯を修復する再石灰化などの作用があります。
運動能力の低下
運動などで体に力が入る時、歯を食いしばることで力が発揮されます。
また、歯がしっかりと噛み合っていないと体のバランスが悪くなり、転倒しやすくなるといわれています。
噛み合わせは、運動能力に大きく関わっているのです。
認知症
しっかりと噛むことで脳に血流が行き渡り、認知症になりにくいといわれています。
さらに入れ歯をせずに放置しておくことで、よりリスクが高まります。
その結果、健康寿命が短くなり介護が必要な期間が長くなる、といった可能性もあるのです。
歯を失わないようにするには
歯を失う原因の2つは虫歯と歯周病です。
厚生労働省によると、歯を失う原因の29%が虫歯、37%が歯周病となっており、歯周病の方が割合が高くなっています。
年齢が上がるにつれて歯周病のリスクが高まります。
歯周病は、自覚症状をあまり感じずに歯を支える骨が溶けるといった怖い病気です。
また、高齢者の虫歯は「根面う蝕」という、歯の根元の虫歯になりやすくなるので注意が必要です。
毎日の歯磨きや歯間ブラシの使用の他、かかりつけの歯科医院での定期検診で虫歯や歯周病の早期発見、早期治療が何よりも大切です。
口腔内を清潔にすることで、誤嚥性肺炎の予防にもつながります。
また、すでに失っている歯が多い場合も、他の健康な歯をできるだけ長く保つようにすることが重要となります。
8020運動の達成率は増加傾向にあります。
歯がしっかり残っていることは、健康で長生きすることに直結します。
信頼できるかかりつけの歯科医院で定期的にメンテナンスすることをおすすめします。
詳しくは歯科医師にご相談ください。